国全体のデータをブロックチェーンの仕組みによって分散管理すること、estocoinという自国発の仮想通貨の開始を試みていたり、新しい取り組みを他国に先駆けて社会実装しているエストニア。
今回は、そんなブロックチェーン・電子先進国エストニアのテクノロジー系のStartupサービス事例を紹介していきたいと思います。
エストニアのテクノロジー系Startup
次世代型人材マッチングプラットフォーム「Jobbatical」
旅行中などでも問わず、世界中で職を探すことができる次世代の職探しのプラットフォームとなることを目指しているサービス。日本でも存在するランサーズやクラウドワークスなどの提供するクラウドソーシングサービスとの最大の違いは、ユーザーである雇用側も労働者側も「オンデマンド」を前提に職のマッチングを果たすことができること。1年間だけエストニアに旅行で滞在して、同時にエストニアで仕事をする機会を見つけたいという時などに活用できます。
フリーランスの外部委託のような契約ではなく、社員として定期間の契約をオンデマンドに行うことできるため、世界中を旅しながら働きたい人にとっては最適なサービスですね。
サイトのデザインはAirbnbとどこか似ているものを感じさせます。
ブロックチェーン技術で情報と資金の流動化「Funderbeam」
世界中のスタートアップの一元的なデータをブロックチェーンの仕組みを活用して収集、投資家に対して提供し、投資家が世界中のスタートアップから最適な投資先を見つけることを可能とするサービス。2017年3月に開催されたSLUSH TOKYO 2017にて、孫泰蔵さんのMistletoeから200万ユーロ(約2.4億円)の資金調達を成功させています。ビジネスモデルとしては、投資家の投資額の数%を運営元が手数料として取るというシンプルなもの。サイト上でstartupを検索することができ、掲載されていなくてもすぐに追加できるような設計になっていますね。
(画像:https://funderbeam.com/)
右下のお問い合わせ欄からすぐに運営元に連絡をすることができるという機能であったり、startupを検索する上でのUIがとてもわかりやすくて良いですね。
X-Roadを活用し、スモールビジネスのサポート「LeapIn」
スモールビジネスを誰でも手軽に開始できるように、会社設立や会社名登録、口座登録、税金処理など様々な作業をサポートするサービス。エストニア政府の発行する電子IDカードと連動しているため、登記にあたって必要な諸々のサービスを手軽に簡単に受けることができます。最低月額料金は8000円程度で、日本でもスモールビジネスをしている個人事業主を対象に経理周りの簡素化サービスを提供しているfreeeの月額2000円と比べると割高な気がしますが、どの程度のサポートを受けられるのか気になるところですね。
会社名を検索して、似たような会社名が登録されていないかすぐに調べることもできます。エストニアの国民情報、各企業の情報、行政の情報などを管理しているX-Roadと連携したサービスであるため、利用者が増えれば増えるほどネットワーク性が強まって利用者の利便性は高まっていきそうです。
Estoniaのライドシェアサービス「taxify」
(画像:https://taxify.eu/)
こちらは、UberのEstonia版のようなライドシェアサービス。UIもUberそっくり。
(画像:https://taxify.eu/)
エストニアにローカライズしているのかと思いきや、同社ブログによるとケニアでのサービス提供も開始したとの発表がされていたので、まだライドシェアが浸透していない国にどんどん先陣切って進出していこうとしているのですかね。UberやLyftなどとどう差別化していくのでしょうか。
デジタルコンテンツ決済の最適化「Fortumo」
(画像:https://fortumo.com/)
Fortumoは、Web・アプリを横断したエンドユーザの支払いに関してのデータ分析、エンドユーザーの認証情報技術サービスを提供しています。同サービスを利用することで、ユーザーはFortumoに登録しているプロバイダのエンドユーザーに加盟店サービスの決済を簡単に請求することができるようになります。また、ウェブサイト上での購入取引をリアルタイムに分析することもできます。同社は、モバイル決済が加速している新興市場に焦点を当て、中東欧および中南米でキャリア決済を提供することにも力を入れているようです。
次世代POS(小売ソフトウェアシステム)を提供「Erply」
(画像:https://erply.com/)
Erplyはフランチャイズの場面で起こっている様々な課題を解決するソリューションを提供しています。フランチャイズ店のそれぞれの営業状況、キャンペーンの実施状況、その効果などのデータをダッシュボード上で簡単に分析できるツールを提供することで、小売の現場での生産性を上昇させることを目指しています。
(画像:https://erply.com/)
APIも提供されているようで、データを一元的、柔軟に管理・分析できるという点では価値がありそうですね。
再生可能エネルギーのデータ管理・分析「Eesti Energia」
(画像:https://www.energia.ee/en/avaleht)
世界をリードするプロバイダの天気、気候、環境データなどの高品質な天気予報に一貫したプログラムでアクセスでき、データ駆動型アプリケーションを簡単に構築でき、分析の効果を最大化することをサポートします。また、国際的な液体燃料市場においてもサービスを提供しており、バルト諸国およびポーランドの電気およびガス市場で事業を行っています。
(画像:https://www.energia.ee/en/avaleht)
Powerboardというサービスでは、視覚的に豊富なクラウドベースのツールで、リアルタイムの運用データ、サードパーティのデータセット、高度な分析機能を組み合わせて、組織全体のインタラクティブなデータを提供しているようです。
IoTデータをリアルタイム分析「Nordic Automation Systems」
2014年に設立された同社は、数十億のデバイスのデータをリアルタイムで接続・監視・分析するためのプロダクト、LPWANネットワークを構築するための公衆または私設のIoTネットワーク用のすぐに使えるソリューションなどを提供している。正確なデータと単調な繰り返しの手作業を削減することを目指す。
これからIoTデバイスが普及していく中で、それらから取得できる膨大なデータをいかに管理して、分析して価値のある情報に変えていくのか各社が取り組んでいるところのど真ん中のサービスを提供していますね。
自分に最適な居住地をレコメンド「Teleport」
Teleportは、自分がどこで働き、生活していくのが最適なのかをレコメンドしてくれるソフトウェアを提供しています。もともとSkypeの開発に携わっていたメンバーが集まり、世界中の才能の移動の活性化を目指しています。
個人的な好みが世界中の254都市とどのように一致しているかに基づいて、自分にとって最高の場所をレコメンドしてくれる機能は、一時期Facebook上で利用している人がちらほらいた印象です。他にも、to-doリストや行きたい場所をガイドする機能なども提供している。
まとめ
エストニアのstartupサービスに関して見ていきましたが、「データの分析」や「スモールビジネス」や「次世代の働き方サポート」などの点に特化しているサービスが多かったように思います。データの重要性が世界的に認識されるようになる前からX-Roadを開発、国のデータを管理する仕組みを推進してきたことからも、エストニアでデータ活用系のサービスが多く生まれているのは必然の動きのような気がしますね。
独自の国柄とstartupエコシステムの盛り上がりを受けて、次なるSkypeが生まれる日も近そうですね。今後のエストニアのstartup界隈はチェックし続けていきたいと思います。
では!