「エンジニアが採用できない...」という声をどこでも聞くようになってはやくも数年が経ちました。
そんなエンジニア採用を難しくさせている大きな原因の一つが、「優秀なエンジニアほど転職市場に出てこない」という事情。
優秀なエンジニアは転職サイトに登録して転職活動をすることが少なく、知り合い経由で転職を決めてしまうことが多い。
エンジニアの勉強会ならまだしも、OSS活動(オプーンソース開発のコミッターの集まるコミュニティ)、AtCoder・Kaggleガチ勢のコミュニティなどに採用担当者が入り込んでいくことはほぼ不可能。
そんな事情の中でも、自社の開発組織・新しい技術を取り入れていること・優秀なエンジニアが在籍することを発信することで、少しでも知ってもらい、興味を持ってもらうことが重要になってきている。
そんなエンジニア採用に関わる採用マーケティングに関してまとめました。
採用マーケティングとは何か?
採用マーケティングは、マーケティングの考え方をもとにして採用を進めていこうという手法のことです。
従来のようにヘッドハンターなどに採用を依頼するのではなく、自社の採用したい候補者を明確化し、採用したい候補者はどのようなニーズを持っているのか仮説立て、どのような採用手法を用いれば自社の採用成功に繋がるのか効率的な方法を探して改善を繰り返していく。
そして、このPDCAをデータを元に行なっていくことが重視されています。
エンジニア採用で採用マーケティングが必要な理由
エンジニア採用で採用マーケティングが必要とされるようになってきた背景には、エンジニア人口の少なさ・エンジニア採用の企業間の競争激化があります。
完全に売り手市場の様相を呈しているエンジニア採用市場において、エンジニアは候補が多すぎるが故に各社の特徴を捉えきれず、知り合い経由での入社を選択してしまうことが多くなってきています。
このような状況の中で、対マスに一般的な会社紹介をしていても優秀なエンジニアには情報が届かず、認知すらしてもらえない。
自社の求めているエンジニア像を明確化させ、そのエンジニアが転職を考える前の段階から彼らのニーズに刺さるメッセージングを行うことで会社への興味を持ってもらい、いかに自社への採用成功に繋げるか。
以上のような背景から、エンジニア採用を成功させたい各社は採用活動全般のデータを管理してPDCAを回していくというマーケティング的なアプローチで採用を行なっていくようになりました。
IT企業各社の採用マーケティング事例
IT企業各社は、どのように採用マーケティングに取り組んでいるのか、事例を見ていきましょう。
自社の情報の発信
採用マーケティングの中でも、会社の特徴を広くエンジニアに伝えることができる手段であるテックブログでの発信。
周りのエンジニアを見ていても、テックブログとエンジニアの接する時間は長いです。
実装時に他社のテックブログを参考にしてシステム構成を考える材料にしたり、実装時に参考にしているので。
自社ブログ メルカリ
圧倒的な記事数を誇るメルカリのメルカン。Go言語やiOS、テスト自動化などの開発事例を調べたくてググると、よく出てきますね。
「社外に出せる社内報」という考え方や、「ライトが当たらないスタープレイヤーを取り上げる」という考え方が内部の社員にも価値を生んでいる好例。
↑の記事は、メルカンの考え方が凝縮されているので、ぜひ読みたい。
2016年から始まってここまで積み上がってきて今のメルカンがあるので一朝一夕に真似することは難しいですが、考え方から得られるものは多い事例ですね。
↓こんな形でテックブログをもとに企業のランキング的なものが出されることもあるので、エンジニア採用を成功させる上で会社として重要視して取り組みたいですね。
採用資料公開 SmartHR
SmartHR 社が面接で使っている資料を Speaker Deck で公開しました!昇給実績や、いま入社した場合にもらえるストックオプションのシミュレーション結果もアリます。ほぼ全職種募集してるので、お気軽にご応募ください!https://t.co/d1hl3rXeC6 pic.twitter.com/ey6dBB7B8z
— 宮田 昇始 (@miyasho88) 2018年8月8日
2018年の8月。全採用担当者に激震が走ったのではないでしょうか。
代表がSNSを活用して会社のデータを発信して興味をかっさらっている好例だと思います。
今でこそ多くの会社は採用資料を公開していますが、2018年8月に当時はまだあまりどこの会社もしていなかった(と記憶してます)採用資料を公開するという取り組みをしたSmartHR。
ちゃんと2019年度最新版にアップデートされているのもさすがですね。
多くの採用候補者が知りたい給与や事業成長、事業の今後の構想、エンジニア比率、会社の文化などについて簡潔にデータを用いて説明されていて、デザインもシンプルで見やすい。
採用資料公開のその後どのような効果があったのかは、下の記事で紹介されています。
SNS活用
Twitter、Youtube、Facebook、Instagram、TikTokとさまざまなSNSアカウントがありますが、それぞれのSNS上で様々な採用の事例が生まれていますね。
Youtube
若者のYoutubeへの接触時間が増えてきているのにしたがって、学生や転職候補者が企業選びをするときに、会社に行って話を聞くだけではなく、Youtubeなどで発信されている情報を参考にすることも今後増えそう。
「就活」「転職」関連のYoutubeチャンネルは日本国内ではまだまだ少ない印象ですが、今後さらに増えてくることが予想されます。
各社の内定者にインタビュー形式で、どのように就活を進めたか、大学時代に何をしてきたか、どんな人が会社に合いそうかなど就活に関わる話をしている「内定チャンネル」。
就活関連の情報をメインで発信している「SHUN」さん。
GAFAのように応募者数が膨大になってくると、その面接準備がコンテンツとして人気になるのもうなずけますね。
2019年12月時点で116万人もの登録者がいる「CS Dojo」というチャンネルでGoogleへの入社経緯が発信されていたり
もはやGogle自身がGoogleのコーディングテストの進み方を公開していて、準備ができるようにしています。
応募者が増えれば、そのぶんだけ優秀なエンジニアが採用できる可能性も高いと考えると、当然の施策なのかも。
Twitterでは、「#Twitter転職」というハッシュタグで自分の職歴と希望年収・職種などをツイートしている候補者も増えてきています。
企業側からすると採用の母集団形成の意味合いで活用できるし、転職活動中の人からすると自分から企業を調べて応募しなくても、自分の希望する条件に合いそうな企業から連絡をもらうことができる。
実際にTwitter転職はうまくいっているのか?転職した側の意見は @_syotarow さんの↓のツイートへのリプライが参考になります。
Twitter転職した人ってその後どうなったんだろうね?って話をしてる
— しよたろオオン🤖すごいWebエンジニア見習い (@_syotarow) 2019年7月28日
TikTok
iCare社の 中野雄介(@y0uth_K) さんのTikTokでの求人動画が一時期バズってましたね。
TikTokはユーザー層がまだまだ若年層であることから、採用に使って成功している事例はあまり聞きませんが、急成長中のプラットフォームなだけにこれから新たな採用マーケティングの勝ち筋が見つかっていく気がしています。
クラシルのInstagram活用の事例から学べることは多いので、ぜひ読んで欲しい事例がこちら。オーガニックでの運用でこれだけPDCA回して多くの人に情報が届くアカウントに育てているのは脱帽もの。
採用に直接繋がることはなくとも会社の認知にはつながるので、採用の母集団形成という意味でとてつもない意味がありそう。
変わったメッセージングでの求人
おなじ求人を出すにしても、「どのような言葉で求職者に届けるか?」がめちゃくちゃ大事なことがわかる事例を紹介します。
早期選考をサキドリと表現:サイバーエージェント
サイバーエージェントの早期選考のメッセージング。
「なぜ早く選考を受けるとメリットがあるのか?」を学生が理解できるように、「これからの就職活動で活かせるフィードバックをもらえる機会として活用してみてください。」という伝え方をしている。
これできる人いませんか?:ZOZOテクノロジーズ
具体的に解決して欲しい課題を提示することで、その課題に取り組みたいエンジニアに興味を持ってもらえる。
(逆にいうと、転職候補者の職務への考え方が固定化されるおそれもあるので、諸刃の剣ともいえる。)
エンジニアはどんな視点で求人や会社のことを見ているのか?どんなときに「おっ!」と感じるスイッチがあるのか。
↓下の記事のように、エンジニアが会社を選ぶときに何を重要視しているのか表明していることもあるので、定期的にチェックしておくとエンジニアに刺さりやすいメッセージングがしやすいと思います。
まとめ
以上、「採用マーケティングとは?エンジニア採用に強い会社は何をしているのか」でした。
色々な会社の事例を紹介しましたが、自社の抱えている状況によって解決優先度の高い課題は違うと思います。
自社にあった課題解決を見定め、採用マーケティングに取り組むきっかけになれば幸いです。
この記事の内容をより詳しく学ぶ上で、LINEの 青田 努(@AotaTsutomu)さんの著書もオススメです。
採用に強い会社は何をしているのか、多くの事例をもとに採用の原理原則を説いている名著です。
では。