仮想サーファーの波乗り

仮想サーファーの日常

プログラミング・SNS分析・自動化などに関してよく書く雑記ブログ

【書評】『アリババの経営哲学』詐欺師扱いから中国を代表する起業家になった男の経営哲学


張燕さんの『アリババの経営哲学』。2014年に初版発行されていたものが、最近加筆されて出版されたようで手にとって読んでみました。


今となっては知らない人の方が少ないのでは?と言えるほどの企業となったアリババを創業した馬雲(ジャック・マー)が同社を経営する上で何を重んじてきたのか。ジャックマー自身の言葉も引用しつつ、彼の人柄が表現されていて時代小説の一部を読んでいるようで面白かったです。


スタートアップで働く人とかは読むとめちゃくちゃ面白いと思うし、こころに刻みたくなる金言が数多く見つかると思う。



読んで印象に残った点


読んでいて特に印象に残ったことをまとめておきます!!


「世界中のあらゆる商売をやりやすくする」

ジャック・マーがアリババの使命として掲げ、共感できない社員は会社を去るべきだとまでしていたのが、「世界中のあらゆる商売をやりやすくする」ということ。

この使命を元に事業の運営・組織の経営を一貫して行なっていた。


なぜ電子商取引を選んだか?
「中国は間違いなくWTO入りする。中国の急成長は中小企業の成長を足がかりとしている。われわれはITで中小企業を武装させ、成長の後押しをする。そうすれば、会社にも金が入る。電子商取引こそが中国の未来の経済を変える。情報化時代になれば、中国は政治的、軍事的ら文化的に、押しも押されもせぬ世界一の一流国となる」 - 馬雲
(引用:アリババの経営哲学 (ディスカヴァー携書)


中国の成長は中国の中小企業が稼ぐ力をつけることによって成し遂げられる。そのためには、中小企業が稼ぐために世界中の市場に商品を売り出せる場所が必要である。と考えて電子商取引に取り組んでいるという点でも、使命と事業が繋がっている。


たとえば、インターネットでの商取引が一般化するなど誰も思っていなかった1990年代に、中国の中小企業が世界中のお客さんに商品を販売し、稼ぐことができるように電子商取引の事業を断行した。

また、社員がタオバオのサイト画面を凝ったデザインにしようとした時には、自分たちの使命はなんであるか?お客様はそのサイトを使いこなせるのか?お客様にとってそのサイトは商売をやりやすくなることに繋がるのかということを指摘した。


「会社としての使命」が全従業員に浸透していることで、全従業員の目標を同じ方向に向かわせることができ、途方も無いような目標を達成し続けることができた。


社会から学び続ける

「能力というのは学校の勉強で高めることができるものではなく、社会で試練を経験することで高められるものなのだ。」 「同じように仕事をしていても、ある人はただ真面目に決まりを守ってら自分で何かを想像しようとは思いもせず、ただ他人をまねて他人に従い、人と同じことをしている。これでは一生大きな成功を収めることはできない。しかし、ある人は創造的な思考を持ち、…決められた条件の中で知恵を働かせ、仕事を完璧にこなし、成功への道を切り開く。」
(引用:アリババの経営哲学 (ディスカヴァー携書)


本書の中で紹介されている考え方として、「社会から学び続ける」というのが印象的。


この考え方は、以下の記事で紹介した本でも紹介されている考え方ですね。

www.virtual-surfer.com

すでに知見としてまとまっている知識はあまり価値がなく、働く中で課題を解決する中で生まれた打開策や考え方が新しい知恵として大きな価値を持つ。


勤勉であるべからず。世界を変えているのは、怠け者。

マイクロソフトも、コカコーラも、マクドナルドも、何かの活動を楽にすることができないか?と知恵を絞った起業家がいて、かれらのおかげで社会に新しい価値が生まれた。という指摘は言い得て妙だなと。


まずは稼げ!話はそれからだ。

商売人にとって、最大の義務は、法と社会道徳を守るという前提の下で、努力して金を儲けることなのだ。 まず金を稼ぎ、自分の会社を存続させることができなければ、自分の信念や目標を持ち続けることはできず、全ての理想が砂上の楼閣と化し、単なる空論に終わってしまう。
(引用:アリババの経営哲学 (ディスカヴァー携書)


本書の中では、ジャック・マーの空想論・理想論のような考え方が数多く紹介されているのですが、本書の最後の方に書かれているこの指摘があって安心しました。笑

まずは継続的に稼ぐこと。これを達成し続けないと、自分たちの組織の使命を達成するどころか、組織を存続することすらできない。


上記のように稼ぐことの重要性が説かれていましたが、短期的に利益を追い求めるのはダメだとも指摘されていました。

目先の利益を追い求めるのは現代人の多くに共通する病で、小さな利益のために浮き足立ち、最終的に何もかもなくしてしまう。逆に自分を高めることに専念し、理想の実現に苦労をいとわないものこそが、最後に大事を成し遂げることができるのだ。
(引用:アリババの経営哲学 (ディスカヴァー携書)


継続的に稼ぐことは大事。でもそれが目的化したらダメだし、短期的に追求したらダメ。長期的に利益を生み出し続けるためにはどうしたらいいか知恵を絞り、コツコツと基盤を整備し、使命を達成するための体力を蓄え続けることが大事だと。



最後の指摘のように、本書の中では一見すると矛盾するような考え方もあるのですが、一見すると矛盾した考え方を哲学として持っていることで、状況に即して最適な判断をくだすことができるのかなと印象的でした。


『竜馬がゆく』で紹介されている坂本竜馬も、「日本を変えるためにはいつでも誰かを殺めることを躊躇してはならない」と手記に書いておきながら、「寺田屋で百人以上に斬り込まれる状況で刀を抜かずにその場をしのぐ」というように、考え方がその状況ごとに矛盾している。

www.virtual-surfer.com


「何を成すか」だけは使命・信念として持っていて、それ以外の考え方は状況によって柔軟に変わっているのが印象的だなあと。



まとめ

以上、『アリババの経営哲学』の書評でした!

2014年くらいまでは、「アリババは偽物の流通をしている極悪企業だ。」みたいな紹介をしている記事もあった気がします。


僕もそんな記事を読んで、アリババって会社はAmazonをパクってコピー品を流通させて儲けている会社なんだなと軽率な理解をしていました。

当時の中国には、インターネット上で金銭のやり取りを行うという商習慣はまったく存在せず、下手をすれば法に抵触し、逮捕・勾留や会社自体が潰されてしまう危険性すらあった。そうした中、マーはあるとき創業者仲間を前に「すべての責任は自分が取る。だから今すぐ(eコマースビジネスを)始めよう」と宣言する。
最悪の事態に陥ったときは、自分が刑務所に行くことも辞さない覚悟をしていた。インターネットもeコマースも、社会にとって必要なものであり、これらを普及促進することこそが、自分のミッションだという強い信念に基づいての行動だった。
(引用:Alibaba創業者、ジャック・マー「あきらめることが、最大の失敗」 | 月刊「事業構想」2016年4月号


信念を元に、中国の発展のために事業を推進したという姿勢を知らなかったし、この本を読むまでどんな使命を掲げて事業を展開していたのか知りませんでしたが、この本を読んで少しでもアリババとジャック・マーの偉業とそれを生んだ考え方を知れてよかった。


去年2018年の5月に杭州行きましたが、また行きたくなりました。

www.virtual-surfer.com



アリババの経営哲学 (ディスカヴァー携書)
張燕 (著)
ディスカヴァー・トゥエンティワン (出版)
2019-01-25 (発売日)


では!