朝倉 祐介さんの『ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と、再生の戦略論』を読みました!
本中では「全ビジネスマンが知っておくべき」という指摘がされていましたが、お金を扱う全人類が知っておくべき内容だなと感じました!
短期的な増収増益を目指してしまい、長期的な事業や会社の価値を重視しない考え方をPL脳と表現していて、その思考方法こそが日本企業の長期的な収益力の低迷に繋がっているのではないかということが説かれている本で、AmazonやFacebookやリクルートやJTの成功例事例とともにシャープや東芝などの失敗事例が詳細に説明されている。
PL脳と比較してファイナンス思考が必要だという指摘に様々な角度からの説明があって学びが多かったので印象に残った点をメモしておきます。
読んで印象に残った点
個人の家計を考える、会社で働く上で参考になった点をまとめておきます!!
PL脳とファイナンス思考の違い
本書の中で一貫して伝えられていたのが、「ファイナンス思考を持って行動するべきだ。」ということでした。そもそもファイナンス思考とはなんなのか?なぜPL脳だと問題があるのか?
PL脳とは、目の前の利益(短期的に利益が最大化されているかどうか)を重視しているため、10年後など長期的に見て事業が成長していくことを毀損する場合がある。逆にファイナンス思考では将来的な価値を元に事業や会社のあるべき行動を考えるため、短期的な利益は損なってでも長期的な利益を生み出しやすい。
ファイナンス思考「その施策は将来的なキャッシュフロー最大化に貢献するのか?」
PL脳「その施策で半期の目標達成につながるのか?」
売り上げや利益が線形に伸びていくことが期待できる高度経済成長期などにはPL脳で事業を伸ばしていくことができ、それが強烈な成功体験となっているため、日本のにはPL脳を持って経営をおこなってしまう経営者が多いと指摘されていました。
ここまで読み進めてみて自分を振り返ると、自分自身もPL脳に陥っていることが多いなと気づきました。
年収の増加に対して頭を働かせることが多くて、3年後や5年後などの自分の収入・資産の変動などを考えることがないなあと。
自分の持っている資産を捉え直して3年後・5年後にどんな資産を持ちたいのか、その時点ではどんな労働環境になっているのか、そこに向けて自分の時間の使い方は最適なのか?など考えるのがファイナンス思考だとすると、目の前の年収や今の会社での昇給をイメージすることしかできていないなあと。
ファイナンス思考を活かしたFacebook・Amazonなど
第3章でファイナンス思考を生かして事業の収益を長期的に大幅に伸ばすことができ、市場内で圧倒的な地位を占めることができた事例としてFacebookやAmazon、リクルートやJTの事例が取り上げられていました。
AmazonはAWS(クラウドコンピューティング事業)を開始する時に、ギリギリ赤字にならない限界のコストとして、1時間で15セントでサービスを提供することを検討していた。しかし、CEOのジェフベゾスは10セントでサービス提供することを断行させた。
というのも、赤字にならないということは他社が同じ事業に参入してきても赤字にならないことを意味し、それは他社の参入余地を許すことになると。それを避けて自社のシェアを拡大してその後の事業展開に繋げるためにも赤字となる価格が必要だという決断だったようです。
またAmazonは、2017年のホールフーズ買収の時には、137億ドルの買収にあたって、160億ドルの資金調達を行っている。これは、当時210億ドルもの資金を持っていた状況を考えると、一見不可解なことのように思います。
しかし、ここで不可解に思う人はPL脳に犯されている。Amazonの資金の運用利率を考えると、低金利で市場から資金を調達して買収金額にあて、自社で保有しているキャッシュは運用でより高い利率で運用を継続する方が、長期的なキャッシュの最大化になる。
この考え方はファイナンス思考を持っていて、かつ企業や事業の将来的な価値を算出し、調達した資金の返済時の金利と自社の資金の利率全てを計算することができないととることができない戦略であり、日本の社会人や日本の経営者に圧倒的に足りていない視点であると。
最近イケダハヤトさんの銀行借り入れの件で、「稼いでるなら、なんで借り入れする必要あるの?実は資金少ないのでは?」というプチ炎上がありましたが、その背景にもPL脳が関係しているのかなと。
ファイナンス思考って何?の好例を知る上では第3章を熟読すべき!自分の家計におきかえて考えると発見があって面白かってです。
PL脳が蔓延する背景
本書の後半で、「なぜ日本にPL脳が蔓延してしまうのか?」という内容が説明されていました。
「日本企業の賃金構造は、ネズミ講的手法」という指摘や、「TOPIXとS&P500の成長差」の話、「日本の経営者が世界的に見て好例である理由」などは、日本経済の状況をデータで俯瞰的に見ないと出てこないし、普段会社で働いているだけでは持ちにくい視点だなと感じました。
日本企業や社会人の多くの思考方法がなぜ生まれているのか?その理由を構造的な問題から捉えられているので、読んでいて学びの嵐でした φ(・・
まとめ
以上、『ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と、再生の戦略論』の書評でした!
会社で働く上でも、自分個人の家計を考える上でも、参考になる視点や考え方が満載の本で満足でした!
巻末のファイナンスの基本的な計算式と考え方に関して、しっかり読めていないのでまた時間をとって読みたい。
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ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と、再生の戦略論
朝倉 祐介 (著) ダイヤモンド社 (出版) |
では!