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「中国のQRコード決済すごい!」論の一歩先へ。浸透の背景とメリット考察


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「中国のQRコード決済が便利!!日本でも早く普及してほしい!!」中国旅行から帰ってきた日本人が、QRコード決済の快適さを語っていることを耳にすることが増えてきましたね。何事も自分で体験してみないことには、物事の価値はわからないと思うので、中国に実際に行ってみてQRコード決済の生活にどっぷりと浸かってみました。

今回は、実際に現地に足を運んで体験してみて、中国でQRコード決済が浸透した背景と利用者・事業者のメリットとしては何があるのかをまとめてみました。

記事の内容は、中国の杭州・上海・深センを旅行してみて現地で実際にQRコード決済を利用してみて感じたこと以外に、中国に詳しいジャーナリストの中島さんの本の内容を参考にさせていただきました。


急速に浸透した理由は?中国が抱えていた課題

「日本ではなかなか普及が進まないQRコード決済が、なぜ中国ではこんなにも急速に浸透したのか?」を考えていくと、そこには両国の決済サービスの発展度合いと消費者への浸透度合い、さらには政府方針の違いが背景にありました。

中国でQRコード決済が普及した背景には以下のようなものがあります。

・クレジットカードの普及を試みたが与信管理ができず、小売業者も端末を用意するコストがあり浸透しなかった。
・偽札が普通に流通していて、意図せず偽札を持ってしまうリスクがあった。
・公共交通機関で機器整備など追いつかず、紙幣を使えない機器も多い。
・小銭や小額紙幣を用意している事業者が少なく適正なお釣りが用意できない。
・紙幣の流通から政府の回収までの期間が長く、紙幣を財布に入れない習慣もあり紙幣が汚い。
・現金だと支払いに時間がかかり行列ができる。
・賄賂が横行していた。

これらの背景があった中国において、2004年にアリババのアリペイ(支付宝)が主にタオバオ(淘宝)での決済時のサービスとして開始され、オンラインでの決済が徐々に普及していきました。さらに2011年には、テンセントがスマホ向けチャットツールWeChat(微信)を開始し、2014年からWeChat Payを開始すると、上記の背景を解決する手段として、スマホQRコード決済が急速に普及していきます。

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2016年ごろになると中国のスマホ普及率は58%で世界一の水準(ちなみに日本は39%。法制晩報のデータより)となったことが追い風となり、WeChat Payのシェアは8億3000万人、アリペイのシェアは4億人規模にまで成長します。


QRコード決済が中国が抱えていた課題を解決

社会的背景を抱えていた中国にとって、アリペイとWeChat Payを利用してQRコード決済ができるようになったことにより、QRコード決済を利用する事業者、QRコード決済を利用する消費者ともに、様々なメリットを享受することができるようになりました。

・事業者・消費者双方に手数料・支払い手段への対応コストが少ない。
・QRコード決済をすることで支払い速度上がり、行列に並んで待つ時間が減った。
・事業者はQRコード用意するだけでよく、消費者もQRコード読み取りだけで手軽。
・お金の動きの跡がつきやすく、賄賂が少なくなる。
・事業者はWeChatやアリペイ経由でのQRコード決済によって、オンラインコミュニケーションを取れるようになった。

実際に中国に行ってみてQRコード決済(WeChat Payのみ)を体験してみましたが、ほぼすべての支払い時にQRコードでの決済が可能で、現金のみ対応は一部ホテルや、地下鉄などの公共交通機関のみでした(地下鉄のチケット販売機でも一部対応しているものがありました。記事最上部の画像がそれに当たります。)その他のほとんどの決済ではWeChat Payもしくはアリペイでの支払いが可能となっており、生活する上での利便性の高さを感じました。


QRコード決済とは、結局のところ何がすごいのか?

QRコード決済を利用することで、サービス提供事業者側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

実際にQRコード決済を利用した際の体験をもとに考えると、「アプリケーションとQRコード決済とWeChat/アリババのサービスの連携によって、①情報の取得/選択 ②決済データと個人情報の紐付けデータ取得 ③データ分析・最適レコメンド を同期できること、それによって一貫したオンラインコミュニケーションができるようになること」が、事業者がQRコード決済を利用するメリットとして大きいようです。

例として、レストランでのQRコード読み取りによるアプリケーションでの注文、決済、その後のレコメンドコミュニケーションを見てみましょう。


①情報の取得/選択

レストランの利用者は、QRコードの読み取りを行うと、レストランのアプリケーション画面から注文したい商品を選択し、注文することができる。(ここまで店員との会話は一度もしなくもてOK)

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入店したらすぐにテーブルでQRコードを読み取ります。

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QRコードを読み取ると、レストランのアプリケーションが開き、メニューから注文できます。アプリケーションはWeChatと連携しているので、ユーザー情報は事前に入力されています(つまり、裏側ではWeChatのデータとレストランでの注文データが紐づけられます。)


②決済データと個人情報の紐付けデータ取得

レストランの店員は、注文内容とQRコード決済がされたこと(ユーザーが利用しているQRコードに登録された銀行口座 or クレジットカード or QRコード決済サービスのウォレット経由で支払いが完了していること)を確認し、料理を配膳する。

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アプリケーション上で注文完了すると、すぐに店員さんがレシートと次回割引券をテーブルまで持ってきてくれました。(注文できたのか不安だったので、すぐに持ってきてくれて安心しました。)


③データ分析・最適レコメンド

レストランは、ユーザーのレストランでの注文商品内容・利用頻度というデータを、個人データ(QRコード決済を提供しているアリババ、テンセントの各サービスから取得したユーザーデータ)と紐付けることにより、そのユーザーに対して、いつ、どのようなオンラインコミュニケーションをすればいいのか最適化していくことができる(例えば、WeChatアカウント経由で、2回目以降利用時の割引クーポンを発行する)。ユーザーは、クーポンを利用することで次回利用時は安く利用することができる。

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注文後すぐにWeChatにメッセージが飛んできます。LINEでいうところの友達登録した企業アカウントのようなもので、レストランの情報、配信しているニュース、クーポン情報などを確認することできます。


以上のように、ユーザーはレストランでの消費行動と、アプリケーションを通しての最低限の操作だけで、サービス提供側は長期的にユーザーのデータを蓄積して最適なサービス訴求をしていくことができます。

QRコード決済での注文ができる前までは、ユーザーがどの地域に住んでいて、どのような頻度で来店して、どの商品をよく注文していて、どのような訴求をしたら購入してくれやすいのか。といったデータを蓄積することができなかったため、レストランはユーザーをマスで捉えてチラシやWebや看板広告で訴求をし、その広告後の売り上げの変化で広告の効果を図っていました。レストラン事業者にとってみれば、QRコード決済での注文ができるようになったことで、このような状況を一変することができたことの価値は計り知れないことでしょう。

ユーザーとしても利用すればするほど個人の与信データ・SNSや各種アプリデータを蓄積していくことができるので、一度使い始めるとアカウントを利用し続けた方がメリットがある状況を作り出すような仕組みになっています。


まとめ

正直、中国に実際に行ってQRコード決済を体験するまでは、「財布も持たずにスマホだけで手軽に決済できて便利じゃん~!」くらいの認識しかありませんでした。

しかし、実際に利用してみるとQRコード決済を基軸にそのユーザーのデータを蓄積してユーザーを一意に評価していく。そのデータによる評価結果に基づいて最適な広告・訴求をしてユーザーの反応をもとに広告・訴求内容を最適化していくことができる。そして、ユーザーはその裏側部分を意識する必要がなく、QRコード決済を利用して快適に生活していくだけ。という実によくできた仕組みであることを身をもって理解することができました。

日本でも「決済」と「ユーザーデータの蓄積」と「評価/与信提供」をしようと取り組んでいる会社は、メルカリやLINEなど数社あると思うので、各社の今後の動向から目が離せません。


また、一度QRコード決済に慣れてしまうと現金で支払いをすること、現金を持ち歩く生活をすることに違和感を覚えるようになりました。FacebookやLINEでコミュニケーションをとるようになって以降は、固定電話やメールでのやり取りをほとんどしなくなった(したくなくなった)感覚に近いものをQRコード決済に感じました。話で聞くのと実際に体験するのでは実感値が全く違うものになるので、ぜひとも中国に行った際は体験してみてください!


ちなみに今回、参考にさせていただいた本はコチラ ↓

中島さんが実際に中国人の方に膨大なヒアリングをして得た知見や考察、データをもとにまとめられているので、中国でのQRコード決済浸透の背景がとてもよく理解できます。中国に旅行に行かれる方は、QRコード決済体験前後に読むと「QRコードすごい!」の一歩先の感想を持つことができるかと思います。


中国のQRコード文化を生んだアリババとテンセントに関する記事もどうぞ。

www.virtual-surfer.com

www.virtual-surfer.com

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今回は中国語をしっかり勉強せずに行ったことが後悔。次回は中国語を聞けるきたいになってから行こうと思います!

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では。