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アリババ(阿里巴巴)のニューリテール戦略の全貌とこれまで


中国のインターネット黎明期の1999年に創業されてから近年目覚ましい成長を見せ、2018年3月現在では世界第8位の時価総額を誇っているアリババ・グループ・ホールディング。今回は、そんなアリババの創業者ジャック・マーが構想し、現実のものとなりつつあるニュー・リテール戦略の全貌とこれまでをまとめておきます。


アリババのニュー・リテール戦略とは?

ジャック・マーが2016年の雲栖大会で語った「New Retail」という概念。そこでは、オンラインビジネスが今後十数年でなくなり、オンラインとオフラインを融合した「ニューリテール」(新しい小売業)が誕生するという説明がなされた。Alibaba GroupのYoutubeチャンネルの動画に「New Retail」のイメージが表現されている。

www.youtube.com


ニューリテール戦略の大筋:8路大軍(baludajun)

ニューリテール戦略の8路大軍
1. ECショップ:Tmall
2. 百貨店:百聯集団
3. 家電:蘇寧電器
4. 食品を扱うスーパーマーケット:盒馬鲜生(ファーマーションシェン)
5. 地方生活サポート:口碑(コウベイ)・餓了麼(ウアラマ)
6. 農村分野でのEコマース:農村タオバオ
7. スマートコンビニ:天猫维军超市(Tmallスマートコンビニ)
8. 家具や生活用品:ハウスセレクション
(参考:アリババが食品デリバリーの餓了麼(ウアラマ)を買収協議、ニューリテール戦略のポテンシャルが拡大!? | GloTech Trends

アリババのニューリテール戦略の大筋は以上のような8つの方針で進められているようです。それぞれの方針に従い、他社買収・提携をしながらアリババ・グループのプラットフォーム連携を進めていっているのが分かります。以下、それぞれの方針に関しての動向を確認していきましょう。


ECショップ:Tmall

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(画像:天猫国際(Tmall Global)とは?出店方法や、日本企業の事例を徹底解説!

まずは、ECショップの天猫国際(Tmall Global)。こちらは、阿里巴巴(アリババ)が2013年に開設した、越境EC専門のモールです。2003年に開設したC2C(消費者間取引)のマーケットプレイスである淘宝網(タオバオ)とは違い、天猫国際(Tmall Global)では、B2C(企業が個人消費者を対象にする取引)が行われています。

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(画像:https://www.fbicgroup.com/sites/default/files/SCR2017_full.pdf

中国国内でのEC取り扱いシェアの6割近くを誇り、No.1のプラットフォームとなっています。在庫数の幅広さに加えて、AliPay(アリペイ)と連携していることもあり、与信データを活用して安心してやり取りができることも人気の一因のようです。

後述するが、アリババはこのTmallに出店している店舗の扱っている商品在庫データを保有していることが、ニューリテール戦略を実現する上での重要材料となっている。


百貨店:百聯集団

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(画像:百联集团--ENGLISH

2018年2月に上海市政府系の小売大手である百聯集団と戦略的提携関係を結んだことで、アリババは百聯が運営している百貨店やスーパーマーケットなど4700カ所余りの実店舗を事業ネットワークに取り込むことが可能となった。

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(画像:https://www.fbicgroup.com/sites/default/files/SCR2017_full.pdf

売り上げで見ると、百聯集団が国内の小売において重要な位置付けにあることがわかる。

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(画像:https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/cn/Documents/cip/deloitte-cn-cip-china-online-retail-market-report-en-170123.pdf

E-Commerceの成長は続いているものの、成長率としては鈍化していることがわかる。アリババとしては、ECで取りきれない市場・顧客のデータを百貨店などのリアル店舗との融合によって獲得していく方法を模索しているのだろうか。


家電:蘇寧電器

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(画像:主頁 - Suning 蘇寧

南京市(江蘇省)に本社を置く蘇寧電器。2009年に日本の家電量販店ラオックス(Laox)を買収し、ネット通販サイトを構築して家電・デジタル製品にかぎらず、家具、食品、書籍、アパレルなどの総合ネット通販サイトの展開を進めている。アリババは2015年に蘇寧雲商集団に2割出資したとされている。


食品を扱うスーパーマーケット:盒馬鲜生

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(画像:有盒马,购新鲜

アリババは2016年3月に、盒马鲜生(hemaxiansheng)に投資をしている。この店舗は、キャッシュレス決済を実現し、機械や常駐しているシェフが購入食材を店舗内で簡易に調理してくれるレストラン機能を合わせ持っている。2016年1月に上海に第1号店がオープンし、コンビニ戦略を担う「F2」という店舗も開始されたりと、アリババの出資を得てから拡大を続けている。 

盒馬鲜生(ファーマーシェンション)のCEOは、京東物流のCEOを勤めた後、2016年3月にアリババから1億5000万USD(日本円で165億円程度)に及ぶ資金調達を行い、現在は実質的にアリババの下で事業展開を行っている。

盒馬鲜生の仕組みとしては以下のようなものがあるようだ。

・即時にその場で使用したいものはカートに入れて決済し、急いで受け取る必要がないものはオンライン決済して、後日お店側が自宅まで配送。
・スタンバイしているスタッフは、自分の担当エリアの食材に関する注文が入ると、店内の商品を取り出して袋に入れて、棚の上に流れているベルトコンベアーに積み上げる。
・商品構成は、アリババが保有するオンラインショッピングのビックデータを分析した結果、人々の通常の食生活を満足させるためのアイテム数を提供している。
・在庫が切れそうなタイミングで常に天猫(Tmall)から補充する。
(参考:【アリババニューリテール戦略の全貌】第3回:盒馬鲜生(ファーマーションシェン)は4つの複合体O2Oスーパーマーケット|アリババ | GloTech Trends


地方生活サポート:口碑・餓了麼

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(画像:口碑

口碑(Koubei)は2015年に、Alibaba と同社のモバイル決済関連会社であるAnt Financialによって、設立されました。口碑のサイトでは、様々なショップやレストランのレビューを閲覧や投稿をすることができ、オンラインで配布されるクーポンを実店舗で使用したり、店頭に用意された情報源からオンラインに接続して商品やサービスの詳細情報にアクセスすることを可能にし、ユーザーが商品を購入するための意思決定材料と割引キャンペーンを提供しています。

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(画像:饿了么-网上订餐_外卖_饿了么订餐官网

食品デリバリーの分野では、主にアリババからの出資を受けている青いジャンパーを着たバイクデリバリーの「餓了麼」(ウアラマ)と、テンセントから出資を受けている黄色いジャンパーを着た美団外売(メイトゥンワイマイ)が熾烈なシェア争いを繰り広げている。食品デリバリーでユーザーが負担するコストは、5-6元/回(80円から100円)とも言われ、ユーザーが負担する配達コストに比べて利便性が高いためにこの数年で急拡大を見せている。

盒馬鲜生では、店舗から3キロ以内の住民に対して、注文後30分以内のデリバリーを実現しているが、今後は餓了麼の配達員が食品デリバリー分野の役割を担うことが実現することも考えられる。リアル店舗と消費者を結ぶための手段として餓了麼の持っている可能性は大きい。 https://lxr.co.jp/blog/3881/


農村分野でのEコマース:農村タオバオ

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(画像:合伙人召集令

アリババが2014年末から中国の農村部に出店を始めた農村タオバオ。周辺住民は、近隣に設置された農村タオバオにて、アリババECサイトで注文した商品を受け取れる。またサービス拠点には、売れ筋商品やおすすめ商品などが常に在庫として置かれており、その場で買うこともできる。今後はローンや保険、投資商品、医療サービスなどの物販以外の商品も販売し、農家が生産物をアリババに出店できる機能追加していく計画のよう。同社は2019年までを通して16億ドルを農村コマースに投資し、100,000の農村タオバオ(Rural Taobao=農村陶宝)センターの開設を最終目標としているとのことです。

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(画像:アリババの成長事業「農村タオバオ」とは何か?中国版地方創生の鍵は小さな起業家たち |ビジネス+IT

農村では都会とは違って、依然としてブロードバンド接続が限定されており、大半の村落でブロードバンドに接続がある家庭は依然として僅か数%程度となっているため、その問題を解消することが急務となっています。中央政府も同様の問題に対して取り組みを進めていくとのこと。

日本でセブンイレブンがフランチャイズの仕組みで店舗を拡大していったように、農村タオバオでも農村の雇用を新たに創出し、店舗での売り上げが良ければそれに比例して運営している店長の収入が増えるような仕組みになっているようだ。


スマートコンビニ:天猫维军超市

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(画像:天猫小店维军超市父子交替与小店的新旧变革__财经头条

天猫维军超市(Tmallスマートコンビニ)が杭州の浙江大学で開始された。この店舗では、その地域の住民がどのような属性でどのような商品を購入しているのかを分析した分析データと店舗の在庫データを元に、アリババのTmallで最適な商品の最適量購入を最適なタイミングで行うことができ、店舗売り上げの向上を実現している。また、オンライン(Tmallなど)での購入価格とコンビニでの購入価格が偏ってしまってどちらかでの購入が増えすぎないように、最適価格の調整も行われているようだ。

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(画像:虫宅:马云实体小超市,天猫线下小超市正式开启_搜狐科技_搜狐网

売り上げをダッシュボード上で簡単に管理・確認できるようだ。


家具や生活用品:ハウスセレクション

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(画像:Alibaba will establish their own shopping mall — “More Mall”

アリババは銀泰と共同で、ハウスセレクションという家具店舗をオープンしている。店舗は家具体験の場所として位置付けられており、顧客は店内で気に入ったものがあれば、商品をオンラインで注文購入出来る仕組みとなっている。これによって、重い商品を自分たちで運ぶことなく、待っておくだけで自宅まで配送されるという体験を提供している。また、スマートフォンサイト上に表示された商品の口コミ情報を見て、その商品を購入するか検討するという購買行動が生まれているようだ。

youtu.be

アリババは、2018年4月にアリババ本社の近くの西渓園地区に、ニューリテールを体現できるようなショッピングモール「more mall(猫茂)」をオープンするようで、そこではハウスセレクションの他に、化粧品をつけてみた状態を仮想体験できるスマートミラー、トイレでの緊急のニーズに対して、タダ同然でティッシュや子供おむつを配布するような仕組みも提供するとされている。


まとめ:アリババの目論見とは?

ここまで、アリババのニューリテール戦略とこれまで実現していることを見てきたが、結局のところアリババは何がしたいのか。アリババの行っている事業展開には、中国国内の未だECに取り組んでいない小売業者・スモールビジネスのInternet化を促進し、売り上げの向上を助ける代わりに消費者購買のビッグデータを収集する。という特徴があるように思います。

個人的にジャック・マーのプレゼンテーションが好きでよく見るのですが、彼は「small business」という言葉を多用しています。中国の小売(つまりは消費者)が全てアリババのプラットフォーム上で購買行動をとることで、消費者の与信データ、購買データ、趣味嗜好データなどなど、様々な事業展開が考えられると思います。これからアリババ・中国の動向はどうなっていくのか...。


2017年に行われたジャック・マーによるプレゼンテーションの中で、彼が力強く言及している一説がとても印象的でした。

www.youtube.com

Internet is just the beginning, e-commerce is just the beginning, the good thing about a young people is that we always people learning. One of the reasons people say what's the secret of China grows so fast one of the things that we Chinese learn very much in the past of 30. we learn a lot of America. ... you learn from others you make progress.
- インターネットは始まりにすぎない。E-コマースも始まりにすぎない。若い世代にとっては学んでいることが重要だ。多くの人は「中国はなぜ急速に成長したのか?」と理由を求めるが、答えは簡単で、我々中国人は過去30年間で圧倒的に学習してきたのだ。アメリカの多くを学んできた。...他者から学ぶことによって我々は成長することができる。
(引用:https://www.youtube.com/watch?v=VWxSoccZzCw 動画中の20:00頃より)

米国をはじめ海外に留学生を送り、時にはパクリだと国際的には非難されながらも、30年間圧倒的に成功している会社の事業・技術の学習を継続してきた中国。そしてこれからも学習し続けていくんだ。という気概が伝わってきてとても印象的でした。

まだまだアリババの躍進からは目が離せそうにないですね。


では!